フリーランスは保険も自己責任。知っておくべき保険の知識

創業手帳

各種の保険について知り、フリーランスとして安心して働けるようになろう


フリーランスや個人事業主として働く中で、自分が病気や怪我になって働けなくなった時や業務中にトラブルが起こった場合のリスクを考えているでしょうか。
これらのリスクにかかわる制度の違いについて、あまり詳しくない方もいるかもしれません。

会社を辞めて個人で働くなら、会社に任せていた保険や年金などの対応も、個人で行うことになります。

フリーランスや個人事業主の方向けに、公的医療保険制度から任意保険まで詳しく解説します。

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会社員とフリーランスの社会保障制度の比較


会社員と自営業・フリーランスでは、受けられる社会保障制度に大きな差があります。

両者を比較すると下記の表のとおりですが、会社員のほうが手厚い保障を受けられることがわかります。

フリーランス・自営業者 会社員
公的医療保険 国民健康保険 健康保険
公的年金 国民年金保険 国民年金保険+厚生年金
労働保険 労災保険+雇用保険

どのような差があるのかを、詳しく見ていきましょう。

加入できる社会保険が違う

「国民皆保険制度」と「国民皆年金制度」があるため、会社員・フリーランスともに最低限、必要な医療保険と国民年金保険に加入することになります。
会社員はそれに加え、厚生年金・労働保険(労災保険・雇用保険)に加入しています。

会社員とフリーランスでは加入する社会保険の違いにより、老後の年金受給額や失業した際の雇用保険、労働中の病気・怪我などの保障があるかないかの点で大きな違いが生まれるため、知っておくことが大切です。

保険料の負担割合が違う

また、医療保険・国民年金保険も会社員とフリーランスが同じわけではありません。
会社員はこれらの保険料を勤務先の会社と折半して支払うため、個人の負担額は保険料の半分になります。
一方、フリーランスは保険料を自分で全額支払う必要があり、社会保険料の計算方法も会社員のものとは異なります。

医療保険の場合、会社員の健康保険は毎月の給与額に応じて保険料が計算されますが、フリーランスの入る国民健康保険は前年度の所得に応じて保険料が計算される仕組みです。

会社員を辞めて起業した初年度の保険料は、会社員時代の前年度の所得で計算されることを起業前に知っておきましょう。

扶養の仕組みがない

会社員の健康保険や厚生年金保険には、扶養制度が存在します。これは所得が一定以下の配偶者・子どもがいる場合、その保険料を支払わなくて良いというものです。

フリーランスの加入する国民健康保険と国民年金保険には、扶養の仕組みがなく、配偶者や子どもの保険料も支払う必要があります。

公的年金保険制度の被保険者の種類が違う

会社員とフリーランスは同じ国民年金保険に加入していますが、被保険者の種類が異なります。
国民年金保険の被保険者には下記の分類があります。

第1号被保険者:学生・自営業者・フリーランスなど
第2号被保険者:会社員・公務員など
第3号被保険者:国内に居住し、第2号被保険者が扶養している配偶者など

会社員からフリーランスになる場合、第2号被保険者から第1号被保険者への変更手続きが必要です。
この手続きは退職から2週間以内に行う必要がある
ので、注意が必要です。

フリーランスで使える健康保険の種類


フリーランスが健康保険を使う方法には、下記の4種類があります。順を追って説明していきます。

国民健康保険

国民健康保険はここまで説明してきた通り、会社を退職後に手続きを行って加入する健康保険です。保険料の料率は市区町村によって異なります。

また、国民健康保険は確定申告時に所得控除の対象となります。
申告時には、確定申告書の「第一表」と「第二表」にある、社会保険料控除欄への記載を忘れないようにしてください。

会社員時代の健康保険の継続

退職後20日以内に所定の手続きを行うなどの条件を満たせば、務めていた会社の健康保険を任意継続できます。
任意継続をした場合、人間ドック受診補助など、もともとの健康保険組合のメリットをそのまま受け続けることができます。

会社員時代の健康保険を継続する場合、前述した扶養制度があることも重要です。
これにより、一定の条件下で扶養家族分の保険料を払わずに済むので、扶養家族が多い人は検討する価値があります。

ただし、健康保険の任意継続ができるのは2年間だけという点に注意が必要です。
その期間の保険料は、在職中に会社と折半していた部分を含め全額自己負担になるほか、1日でも保険料を滞納すると脱退となることを忘れないようにしてください。

家族の加入する健康保険組合に扶養で入る

配偶者や子ども、兄弟姉妹がいる場合、彼らの加入している健康保険組合を利用し、扶養に入る手段もあります。
家族の被扶養者になれば健康保険料を払う必要がなくなるため、大幅な節約になります。

ただし、一定以下の収入であることなど、扶養に入るための条件があることには注意が必要です。

国民健康保険組合に入る

ここまで挙げてきた以外に「国民健康保険組合」という選択肢もあります。
これは同業種に従事する人々で構成される団体で、医師・薬剤師・弁護士・建築業界など様々な業種に存在します。
前年の所得に応じて保険料が変化する国民健康保険に対し、保険料が一定であることは大きなメリットです。

代表的な国民健康保険組合には、「文芸美術国民健康保険組合」があります。
これは、日本国内に住所があり、文芸・美術・著作活動に従事している人、かつ、組合加盟の各団体の会員である人とその家族が加入できるものです。
一般的にイメージされる文芸・美術のほかに、デザインやコピーライティングなどのWeb関連の組合もあります。
自分の業務が該当する組合があるか、一度確認してみるのも良いでしょう。

業務のリスクに備える任意保険


フリーランスとして備えておくべきことは健康保険だけではありません。
業務の重大なミスやトラブル、健康保険でまかないきれない病気や怪我などが考えられますが、思わぬ火災や災害も起こる恐れがあります。
また、自分が働けなくなる場合もあり、必要な備えは多岐にわたります。

ここからは、業務上発生しうる各種リスクに備えるための任意保険を見ていきましょう。

賠償責任保険で業務上のリスクに備える

賠償責任保険とは、業務上のトラブルで生じた損害を補償する保険です。
業務中に第三者に怪我をさせてしまった、情報漏えいをしてしまったなどの様々なトラブルが補償の対象となっています。

これらのトラブルの責任は、すべて自分に降り掛かってきます。
時にはそれらのトラブルが数百万円を超える高額の損害賠償請求につながることもありますが、賠償責任保険に入っていれば、そのリスクを緩和することが可能です。

「フリーランス協会」への所属で自動付帯するものや、会員登録や手続きにより利用できる「フリーナンスあんしん補償」などもあります。

医療保険で病気・怪我のリスクに備える

医療保険とは、病気や怪我で入院・手術をした際に給付金を受け取れる保険です。
公的医療保険での高額医療費制度などの備えはできますが、保険や医療制度で賄える範囲以上の出費になる場合もあるため、民間の医療保険に加入することも有効な手段のひとつです。

また、医療保険には先進医療や3大疾病、死亡保障など様々な特約をつけられます。
高額な医療費や入院中の収入減に備えて、これらの特約も必要に応じて検討すると良いかもしれません。

火災保険・地震保険で災害のリスクに備える

火災保険とは、飲食店やオフィスなどで利用する自宅・テナントで火災・風災・水害などが起こったり、損害が発生したりした時に補償される保険です。
地震が原因の場合は火災・水害でも地震保険を付帯させていないと補償されない点や、地震保険は火災保険の契約途中で付けられず、火災保険と同時に申し込む必要がある点に注意してください。

所得補償保険・就業不能保険で働けないリスクに備える

所得補償保険・就業不能保険は、病気や怪我で長期間働けなくなった場合に毎月保険金が支払われる保険です。
この保険は、長期間の入院だけでなく医師の指示での在宅療養も対象になります。
傷病手当金の代わりに適していますが、うつ病などの精神疾患が対象にならないケースもあるため、注意が必要です。

老後のリスクに備える任意保険・制度


前述の通り、フリーランスは会社員とは違い厚生年金の対象にならず、老後・あるいは自分の死後必要になる資金も自分で備えていく必要があります。
老後に必要な資金を確保するために、フリーランスが利用できる仕組みを紹介します。

老齢年金の受給額を増やして老後に備える

老齢年金の受給額を増やす方法としては、以下の4つがあります。順番に詳しく見ていきます。

付加年金・国民年金基金の活用

付加年金とは、第1号被保険者であるフリーランス・自営業が利用できる制度のひとつで、付加保険料を上乗せして払い続けることで、受給年金額を増やす制度です。
月額400円を払うことで、200円×納付月額が年金額に加算されます。

一方、国民年金基金もまた、付加年金と同じく第1号被保険者が加入できる制度です。
加入は口数制を取っていて、何口加入するかで将来の給付額が決まる仕組みになっています。
最大掛金は、後述する個人型確定拠出年金(iDeCo)と合わせて、月額68,000円です。

なお、付加年金と国民年金基金は併用できません。将来設計を考えた上で、どちらを使うかを決めると良いでしょう。

個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用

個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、年金額の上乗せ制度のひとつで、会社員・フリーランスともに利用可能です。
毎月一定額を積み立てる仕組みで、積み立てた掛金を投資信託に利用し、その運用成績で上乗せ額が決まります。

前述の通り、最大掛金は国民年金基金と合わせて68,000円となっています。
国民年金基金で堅実に受給額を増やすか、あるいは多くのリターンを求めてiDeCoを使うかは慎重に判断してください。

個人年金保険の活用

個人年金保険とは、自分自身で保険料を払い込み、老後の年金を受け取れる貯蓄型の保険です。
契約時に決めた年数まで保険料を払い込み、その後の指定期間、もしくは、一生涯年金を受け取れる仕組みです。
公的年金とは別に自分で保険会社と契約する必要があり、様々な種類のプランがあります。

個人年金保険をうまく使えば、退職から年金受給までの期間の資金や、生活費の不足分などを補えます。

定期保険・収入保障保険・終身保険で家族に残す

定期保険とは、保険期間中に被保険者が亡くなる、高度障害状態になるなどの場合に保険金が一括で支払われる保険です。
葬儀代や学費負担などの大きな出費の時には重宝する保険である一方、一括で支払われた高額の保険金を長期間扱うためには相応のマネーリテラシーが求められるため、生活費としては扱いにくい側面があります。

収入保障保険とは、被保険者が死亡・高度障害状態になった場合に毎月一定額が保険期間まで支払われる保険です。
残された家族の生活費の確保には、定期保険よりも収入保障保険のほうが向いているといえます。

終身保険とは、文字通り一生涯の死亡保障を得られる保険です。一定期間後の解約で支払額以上の解約返戻金を受け取れることもあります。
葬儀代の準備だけでなく、解約返戻金を大きな出費に充てるといった運用も可能です。

遺族年金が少ないフリーランスとして働く上で、これらを組み合わせて将来の自分と家族のために上手にお金を確保しておくことも重要です。

まとめ

一般の公的制度だけではどうしても不足しがちな将来への備えは、任意保険や別の制度を利用して対応できます。
早い段階からそれらを利用すれば、トラブルや災害などに見舞われた際にも必要以上に恐れずにいられます。
フリーランスで安心して働くためにも、まずは自分に合った制度や保険を知ることからはじめましょう。

創業手帳の冊子版(無料)は、保険や制度など、フリーランスに必要な情報が掲載されています。創業前や創業して間もない時期の情報収集にお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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